こどもの視力の発達
学習の約80%は見ることから
見ることで形、色、明るさなどを感じとり、物事を楽しんだり、食べ物をおいしそうと思ったりします。こどもにとっての視力は、心身ともに健康な成長をとげるための必要不可欠な窓口です。運動や学習をするうえで大切な役割を果たし、さらにそれが思考力、推測力、創造力の発達にもつながります。
6歳頃までに視力が完成
生まれたばかりの赤ちゃんは明暗がわかる程度ですが、生後6ヵ月を過ぎると外界のものが見えるようになってきます。視力は「見る」という自然の訓練を通して徐々に発達し、およそ6歳頃までに完成されます。
この時期までにクリアに見える状態にしないと、その後は見る能力が育たず、視覚障害が起こることもあります。
つまり6歳までは、その後の人生に大きな影響を与える重大な時期。こどもだからメガネをかけるのはかわいそう、と考えてメガネを使わないのは逆に悪影響を及ぼしかねません。3歳児検診など専門家の検査を受けたり、日頃からお子さまの視力について気を配りましょう。
生後1ヶ月 | 目の前の手の動きがわかる |
---|---|
3ヶ月 | 視力 0.01~0.02 |
6ヶ月 | 視力 0.04~0.08 |
1歳 | 視力 0.2~0.25 |
2歳 | 視力 0.5~0.6 |
3歳 | 視力 0.8 |
4~5歳 | 視力 1.0 |
6歳 | 視力 1.0~1.2 |
小学校の視力検査ではおおまかに選別
小学校では視力をA〜Dの4ランクで評価します。
以前は0.1刻みでしたが、平成4年の文部省令によって小学校の視力検査は現在のようなランク分けになりました。この理由は、こどもは目を凝らしてよく見ようとすると視力0.1や0.2程度はアップするため、短時間の検査では正確に測定するのではなく、だいたいの視力が判定できればよいと考えるからです。
保護者の方に注意していただきたいのは、お子さまの視力がBランクやCランクでも、近視とは限らないということです。乱視や弱視の場合もあり、遠視でも度数によっては視力が低くなります。
遠視や乱視があり、A・B・C・Dの評価以上に実際には見えていないケースもあります。小学校の視力検査で用紙をもらってきたときは自己判断せず、必ず眼科を受診されることをおすすめします。
視力検査結果の見方
A (1.0以上) |
教室の一番後ろの席からでも黒板の文字を楽に読めます。 | 通常は眼鏡はいらないと考えられます。 |
B (0.7-0.9) |
教室の後ろの席にいても黒板の文字をほとんど読めますが、 小さい文字になると見えにくいものがあります。 |
状況によっては眼鏡を考えてもよいでしょう。 |
C (0.3-0.6) |
教室の席を前にしてもらえれば何とか見えていますが、 きれいに見えているのは黒板全体の半分くらいです。 黒板を見る時には眼を細くして見ている可能性があります。 |
そろそろメガネを考えてもよい時期です。 特に、黒板の文字が小さくなる中高生では 多くの方が支障を感じています。 |
D (0.2以下) |
一番前の席に座っても黒板の字は読めません。 | 本人が見えているから大丈夫といっても、 実際には読めていないと考えられます。 |
成長期にある中学生は、目の構造から視力が変化しやすくなっています。
できるだけ半年に1度は専門家による視力測定を受けましょう。一般的にメガネを使いはじめる目安は、視力が0.7以下になった場合です。実際には一人ひとりの生活環境や目の疲れ具合によって、必要性は様々です。専門家のアドバイスのもとに視力を管理していきましょう。
近視・遠視・乱視・弱視について
よく見えないままにしておくと、学習や運動に欠かせない思考力、推測力、想像力の発達を妨げかねません。
近視以外の場合もあるので注意しましょう。
-
近視とは?
リラックスしてものを見ると、遠くからの光が網膜の手前で像を結びます。近くが見えて遠くが見えない状態です。幼年期から起こり、10代後半頃に進行は止まりますが、パソコンなどの普及で成人以降も進むことがあります。
-
遠視とは?
リラックスしてものを見ると、網膜より後ろでピントが合います。ピントを合わせようといつも目の力を使っているため、特に近くを見るときは目が疲れてしまいます。落ち着きがなくなったり、眩しく感じることもあります。
-
乱視とは?
目のレンズが正しい球面ではなく、外から入ってくる光の方向によって焦点を結ぶ位置が違ってくる状態です。そのため、ものが部分的にぼやけたり、ぶれて見えます。目が疲れたり、文字を読み間違えるケースもあります。
-
弱視とは?
メガネなどで矯正しても視力が上がらない状態です。乳幼児期にものをはっきりと見ることができないと、視力が十分に発達しないことがあります。片方の目だけに強度の遠視や乱視があったり、斜視の場合も弱視に注意が必要です。
小学生までは遠視にも注意を
しかし、調節力が旺盛なため、簡単な視力チェックではなかなか遠視と分かりません。
遠くがよく見えるので、「視力に問題がある」と認識されにくいのが難しいところ。お子さまが読書をしたがらないようなら注意信号です。専門家による視力チェックをおすすめします。
中・高校時代は目が一番酷使されるとき。視力管理もしっかりと。
こんなことはありませんか?
見るとき
- 目を細める
- 片目をつむって見る
- 顔を回し、横目で見る
- 頭を傾けて見る
- あごを引いたり、
上げたりして見る
目の様子
- 目をよくこする
- 目をパチパチさせる
- 視線が内や外、上や下に
ずれることがある - 涙をよく流す
- 明るい戸外で
まぶしがる
その他
- 集中力やおちつきがない
- あきっぽく、根気がない
- テレビを近くで見たがる
- よくつまづく
- ひんぱんに頭痛を
うったえる
成長するとともに近視の度数が進むといわれることがあります。一説では、身長が伸びると眼球も大きくなり、眼のピントが合いづらくなるからともいわれます。身長が伸びる成長期には視力チェックもおこないましょう。
お子さまの目の健康のために家庭で気をつけましょう
健康づくり
- 食べ物の好き嫌いをなくし、バランスのとれた食事を心がけましょう。
- 規則正しい生活をおくり、睡眠時間を十分にとりましょう。
- 戸外での運動や遊びで、総合的な体力づくりをしましょう。
勉強・読書
- 目と文字の距離は30cm以上離し、正しい姿勢で。
- 机やイスは身体に合ったものを選びましょう。
- 寝ながら本を読まないようにしましょう。
- 目を細めて見ないようにしましょう。
- 本を読んだり、文字を書いたりする目を使う勉強と、暗記などの目を使わない勉強を交互にしましょう。
テレビ
- テレビは明るい部屋で2m以上離れてみましょう。
- 調整された鮮明な画像で見ましょう。
- 1時間見たら、10分間くらい目を休めましょう。
- テレビゲームは30分間をめどに休憩をとりましょう。
照明
- 部屋全体を明るくし、デスクスタンドを併用しましょう。
- スタンド照明は鉛筆を持つ手と反対側の横に置き、直接光が目に入らないようにしましょう。
テレビと異なり、パソコンやテレビゲームの場面は、自分から画面に積極的に関わるため、どうしても画面と目の距離が近くなったり、過度に集中したり、長時間見続けてしまうなど視力を酷使する要因が重なってしまいます。ですから次のような点はぜひ守るようにしましょう。
- 点滅、チラツキのない画面を使いましょう。
- 画面のコントラストを強くしすぎないようにしましょう。
- 目と画面の距離は40cm以上離し、正しい姿勢で見ましょう。
- 30分間続けたら、5分以上は目を休めましょう。